追憶のカスタネット通りの時代

2025-12-04

音楽紹介 本紹介

昭和歌謡の魅力の一つに、東京の片隅で暮らすいかにも70年代な重さ(真面目さ)がある若者の別れをテーマにした歌が多々あります。時代や自分の体験とも全く違っているにもかかわらず聴くと切ない気持ちにさせ、そして時代経過から”もし、この歌に登場した人物がその後も存在したら今どうしているのだろう”という夢想をしてしまいます(リアル体験の8.90年代歌謡は純愛と違うもっとラフな軽い恋愛のイメージがあり、あまりそんな気持ちになりません…)。 

そんな歌で勝手に夢想してしまう”その後”を描いたような小説を読みました。昭和を舞台にした「ノスタルジックホラー」の名作が多い朱川湊人の短編集「幸せのプチ」の最初の話「追憶のカスタネット通り」という作品です。

 "ある理由から三十数年ぶりに彼女を捨てたこの町を訪れた主人公が、あの頃の思い出にひたりながら町を巡り、唯一当時と変わらない行きつけの喫茶店「青猫」に入ったことでその後の彼女を知ることになります…。" 

 この短編集にはホラー要素はほぼなく、商店街や喫茶店、テレビドラマに活気があった時代のノスタルジックでちょっと不思議な縁を描く小説という感じで、都電の街”琥珀”を舞台にした連作短編になっています(それぞれ話の時代は違いますが白い犬プチがポイントで現れます)。 

 名短編集「花まんま」や「かたみ歌」「いっぺんさん」のような魅力はこの短編集にはないですが、なんとも言えない郷愁をそそる短編集になっています。

幸せのプチ


● 手紙 - 由紀さおり

● 想い出のセレナーデ - 天地真理


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横浜在住グラフィックデザイン・イラストレーター。詳細はHP「+ELPH+」のProfileに記載。

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