消えた横溝の世界

2024-07-31

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横溝正史作品は、古い因習が残る集落の旧家に起こる惨劇といったイメージが浮かびます。東京などの都市部を舞台にした作品も多々ありますが、名作や映画・ドラマ化された作品は、横溝の疎開先の岡山を舞台にした、「本陣殺人事件」や「悪魔の手毬唄」、「八つ墓村」、瀬戸内海の島が舞台の「獄門島」や「悪霊島」、信州長野が舞台の「犬神家の一族」など、みな田舎の閉鎖的な集落が舞台になっています。


 時々日本の風景から滅んでしまった、そのなんともいえない封建的土着世界に入りたくなり、横溝映画やドラマが観たくなります。今も田舎では昔と変わらない閉鎖的で外部の人間を排他する閉ざされた村社会は根強く残っていますが、家はプレハブ住宅になり小川はコンクリート護岸されビニールハウスやブルーシートなど横溝作品の世界観を根底から覆してしまう風景に日本の田舎はなっています。

Googleストリートビューで世界各地を周るのを趣味としていますが、イギリスなど、ロンドンから50km程度しか離れていない集落なのに100年前とそれほど変わっていないんじゃないか、と思える風景がそこかしこに残っているのに対して、日本では東北や山陰の山間の集落ですら上記の無機質な風景に変わっています。映画やドラマのロケが行われた70年代、わずかに残っていた古き日本の集落風景は、80年代に入ると駆逐され、今は保全地区の観光地を残し日本から消えてしまいました…。


「悪魔が来りて笛を吹く」創作の際、触発された曲
● 「ハンガリー田園幻想曲」ドップラー





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